(春) 復 活 節(ふっかつせつ)
復活節の日の午後(ごご)、子ども会(かい)が始(はじ)まる前(まえ)に、教会学校(きょうかいがっこう)の先生たちは、ゴムで出来たタマゴを十個、隣(となり)の公園(こうえん)の中のあちこちに隠(かく)しました。ゴムのタマゴは、本物(ほんもの)そっくりです。それにラッカーを吹きつけて色つきタマゴにしあげたのは、高校生(こうこうせい)のお兄さんたちです。
夏休み、翔(しょう)君は田舎(いなか)のおじいちゃん、おばあちゃんの家に来ています。「田舎の空って、どうしてこんなに青いんだろう。田舎の雲って、どうしてこんなに白いんだろう。」 庭で、自分の影をじっと見つめてから、空を見上げると、青空に自分の形が白く浮き出します。それが面白くて、くり返し見ていましたが、それにもあきて、えんがわに座って、やがてねころんで、いつか翔君は眠り込んでしまっていました。 夢の中で、翔君は川に入って、大きな「うぐい」を手づかみにしていました。腹の赤い、20センチもある魚です。それをなんびきもつかまえて、ビクに入れて帰って来ると、おじいちゃんが感心して「翔は魚取りの名人だ」と言いました。 ふっと目がさめて、目を細めて空を見ると、まぶしく光る空に一本、白い雲のすじが出来ていました。いつの間にか、おじいちゃんがそばにすわっていて、言いました。 「飛行機雲を見ると、おじいちゃんは、今でも戦争を思い出してしまうんだよ。戦争はいやだな。」 翔君は「五十年以上たっても忘れられないなんて、大変な戦争があったんだなあ」と思いました。 すると、教会でおぼえた「平和を願って、これを追い求めよ」という聖書の言葉が、自然に頭の中に浮かんで来ました。 (秋) も み じ 「もみじを見に行こう。」 とつぜん、お父さんが言い出しました。この間の土曜日のことです。でも、皆だまって朝ごはんを食べていました。 「今日あたりが、一番見ごろなんだがなあ。谷の両側が、目がくらむような赤や黄色のびょうぶになるんだ。」 「びょうぶって ? 」 「絵が描(か)いてある、ふすまのようなものさ。まん中を折って、部屋の中 に立てるんだよ。」 「ああ、それ知ってる。」 わたしは、つい、話につり込まれてしまいました。そして、とうとう、皆で車に乗って、出掛けることになってしまったのです。 お母さんは、まんざらでもなさそう、お兄ちゃんは、めいわくそうな顔で、車に乗っていました。でも、山に入るにつれ、皆の顔も、声も、変わってきました。 「おーい、さゆりー、あそこを見ろよー。」と、お兄ちゃんが叫びました。山と谷が、下から上まで、真っ赤に燃え、黄色い木々や、松の緑も加わって、光り輝いていました。 お母さんは、窓から身を乗り出して 「わー、まー」の連続。お父さんも、感激して、大声で、 「山と丘は、あなたたちを迎え、歓声をあげて、喜び歌い、野の木々も、手をたたく」と、叫びました。 「なーに、それ。」 「旧約聖書イザヤ書五五章の言葉さ」と、お父さんは言いました。 (冬) だれの忘れ物 「あら、だれの忘れ物かしら ? 」 教会学校の後、ミヨコ先生は、長いすの上に置き忘れたマフラーを見つけました。 「まあ、やさしいピンク。草木染めね」
と、先生はマフラーをひろい上げ、しばらく見つめてから、そっと、ほっぺに当てました。やわらかくて、温かいマフラーです。 ミヨコ先生は、そのいすに座っていたこどもたちの顔を、思い浮かべました。 いつも、ふざけたことを言って、皆を笑わせるマヨちゃん。マヨちゃんはイエス様のお話が大好きです。大きな声で賛美歌(さんびか)を歌うソナエちゃん。 《そなえたもう主の道を、踏みて行かん、ひとすじに》という讃美歌の歌詞にちなんでつけられたお名前です。 「今朝は、ちょっと寒かったから。でも、あの二人は、薄着(うすぎ)で、走って来るはずだし。そう、二人のクラスに今度、転校して来た、サヨちゃんね、きっとそうだわ。」 ドアが、そっと開いて、サヨちゃんの顔がのぞきました。先生は、にっこりして、マフラーをさし出しました。サヨちゃんも、にっこりして、受け取りました。 「ママが染めて、編んでくれたの。」 「やさしい、お母さんね。」 「うん。シャローム ! 」 サヨちゃんは、片手をあげて、おぼえたての、イエス様の国のあいさつをしました。 ほかの童話をお読みになりたい方は、 |